大沢 悟郎

「再生」
街を歩いていると、突然いつもの景色だった、まだ十分に使えるような家が取り壊されています。そこには敷地いっぱいに大げさな建物が建ち、いつも塀越しに楽しみにしていた、こぶしの木が倒されています。
このような街に対するやさしい気持ちを忘れたような家がまたひとつ街に現れます。
街の記憶を、次の世代に残し、引き継ぐというテーマを現実化するために、われわれ建築家がどうあるきかを、考えることがあります。
建築のライフスタイルを見直し安全で、長寿命、省エネルギー、循環型そして継続性ということを考えること。再生可能な建物や部材の再生利用を考え、スクラップ&ビルド型の社会の考え方を見直していくこと。
このようなことが、地球規模で考えてみても、一刻の猶予もない状況だと考えます。
私たちはTOS計画工房は、現在、地域のマンションの大規模修繕や木造住宅の耐震診断・補強再生に関わっています。これらの活動で、今いる街への愛着と建築家としての責任を以前にもまして感じています。
今の日本は、早い、安い、お手軽、省力化など、合理性・効率性に傾斜した社会になっているようです。ものをすぐ捨てて新しくするような考え方を見直し再生する。真の豊さを実感する本当の成熟した社会にしなくてはいけないと思います。
 
 
 
   














 

目黒の家の和室再生
所在/東京都目黒区
改修設計/大沢悟郎
改修施工/平林工務店
構造規模/木造2階建
竣工/1940年
改修/2006年


昭和15年築の家の耐震改修をふくめた家の再生事例です。土壁で構成された続きの和室の部屋の間に耐震壁を造り、廻りを板の間として、間に畳をいれた床に改装をしています。現代の和の生活と洋の生活を一体化すると考えを持った、新しい感覚の空間が生まれました。  

港区木造耐震診断
および改修工事

所在/東京都港区

港区から委託されて住宅の耐震診断と補強改修工事を行っています。昭和56年以前に建てられた木造住宅が対象で、まず建物の調査。コンピューターでの耐震ソフトを利用した報告書の作成。一応倒壊しないレベルまでの改修プランと概算見積書作成。その後希望された場合は改修工事の設計監理まで行っています。港区の場合は100万円上限の耐震改修の補助金が出ます。この制度を利用して2007年度までに10件以上の耐震改修工事を行いました。  

逗子の家
所在/東京都世田谷区
設計/大沢悟郎
施工/共栄工務店
敷地面積/248m²
延床面積/170m²
構造規模/木造2階建
竣工/1992年
撮影/コウ写真工房
浴室・玄関・和室を共有する二世帯住宅。1階は介護の必要な親世帯のためのバリアフリーな設計。1階の共用の和室とは風がぬけるようになっています。2階は階段室空間までとりこんだ、大きな居間を中心に各部屋が配置されています。回遊性と風通しを考えたプランです。ベンチのある大きなテラスは引込み扉で居間と一体感をつくっています。  

谷原の家
所在/東京都世田谷区
設計/大沢悟郎
施工/共栄工務店
敷地面積/248m²
延床面積/170m²
構造規模/木造2階建
竣工/1992年
撮影/コウ写真工房
玄関を共有する二世帯住宅です。1階の親世帯は台所・茶の間・寝室などが段差なく一体になるようなオープンな間取り。2階は家族の集うメディアリビングを中心にロフトのある子供室、寝室などの個室が配置されています。台所廻りの回遊性と機能性、風の流れを考えた、住み心地のよい明るい家となっています。  

薬師池の家
所在/東京都世田谷区
設計/大沢悟郎
施工/共栄工務店
敷地面積/248m²
延床面積/170m²
構造規模/木造2階建
竣工/1992年
撮影/コウ写真工房
コンクリート造の柱の上に、木造八角形の平屋の家がのった街角の黒い家。絵描きさん夫妻のための、シンボリックな形。東隣にはコンクリート造のアトリエがあり、この建物と階段でつながっています。1階のピロティーは劇場空間に近日中になる計画があります。2階の広いワンルーム空間は長年の施主の夢であった「木の上に住んでいる感じ」を目の前の薬師池公園の緑を借景にして実現しています。  

荏原の家
所在/東京都世田谷区
設計/大沢悟郎
施工/共栄工務店
敷地面積/248m²
延床面積/170m²
構造規模/木造2階建
竣工/1992年
撮影/コウ写真工房
不燃化建て替え地域の助成を利用した、コンクリート3階建ての2世帯住宅です。車の通りの多い道に面した1階駐車場の奥のシンボル樹 アオハダの木が各世帯から眺められるよう、配置しています。道路側世帯は2階が寝室、3階は勾配天井のゆったりした居間食堂。奥の世帯は2階が居間食堂。そして屋上は両方の世帯が利用可能な物干し場が有ります。密集地でありながら、風と光を考えた設計になっています。  

上池台の家
所在/東京都世田谷区
設計/大沢悟郎
施工/共栄工務店
敷地面積/248m²
延床面積/170m²
構造規模/木造2階建
竣工/1992年
撮影/コウ写真工房
私道の奥に建つ木造2階建ての家。明るい2階を居間と食堂にしたL型の平面の家。ゆったりした階段を上ると、食堂、台所が一体となった片流れの天井の居間に出ます。間仕切りを出来るだけ少なくして、家全体が見渡せる大きな空間に健康的な素材を使い、風と光が十分に入るような配置を心がけて設計しました。  

三鷹の家
所在/東京都世田谷区
設計/大沢悟郎
施工/共栄工務店
敷地面積/248m²
延床面積/170m²
構造規模/木造2階建
竣工/1992年
撮影/コウ写真工房
自然を感じ、落ち着いた住み心地の良い家をめざして設計された二世帯住宅です。与えられた条件の中で、面積を確保するために、片流れの大屋根の総2階の建物ですが、街に対しても、バルコニーや木製の柱によって、陰影のあるやさしい表情を作りました。玄関と浴室が共用の二世帯住宅ですが、2階の子世帯は家を仕事場にするSOHO機能も備えています。間仕切が少ないオープンな明るい家です。